日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

微生物からみたアクアポリンの構造と機能
*北川 良親
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. S66

詳細
抄録
水分子は~109分子/秒と言うとてつもない高速で一つのアクアポリン(AQP)の孔を通過する。ヒトAQP1の結晶の極低温電子顕微鏡による構造解析から、水がアクアポリンの孔のアミノ酸と相互作用して水分子間の水素結合を切断しながら通過するため、細胞の外から中へプロトンの移動がないことが明らかになった。一方、類似の構造を持つグリセロポリン(GLP)の孔はAQPより大きいが、なぜか水を透過しない。AQPとGLPの先祖型である古細菌のアクアグリセロポリン(AGP)のX線結晶構造解析から、水およびグリセロールが透過する仕組みを解明することができた。興味深いことに、植物GLP(NIP)が微生物AQPの遺伝子水平転移で生まれた可能性が、AQPおよびGLPの分子系統学的関係を再検討した結果明らかになった。古細菌や大腸菌のアクアポリンは生育や浸透圧調節に関与することはノックアウト菌を用いて確認できたが、必ずしも、微生物一般に通用しない。ある種の病原性微生物や栽培酵母のようにアクアポリンが機能しない微生物も存在する。動植物で複雑に機能分化したアクアポリンの多様な機能を解明するには、先ずもって、微生物のアクアポリンの機能を解明しておくことが重要である。
著者関連情報
© 2005 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top