抄録
細胞内のCa2+は、植物の生物的および非生物的ストレスに対する認知応答や、生長・発達段階の制御において重要な役割を担っている。このようなCa2+のシグナルネットワークの中には、CDPK(カルシウム依存性プロテインキナーゼ)が存在し、リン酸化により種種のシグナルを伝えることができるセンサー・トランスデューサータンパク質として機能している。我々はCDPKの機能を推定するために、酵母ツーハイブリッド法による基質と相互作用タンパク質の網羅的スクリーニングを行った。シロイヌナズナCDPKの野生型, 非活性型、および恒常的活性型をベイトとして用い(サブストレイト・トラップ法)、半自動化したプログラムによるスクリーニングを行った。その結果、野生型や非活性型よりも恒常的活性型のCDPKをベイトとして用いた場合に、陽性クローンの獲得効率が高いことが確認された。また、単離したクローンのcDNAを用い、大腸菌内で発現させたGST融合タンパク質によるin vitroリン酸化実験を行ったところ、数種類のタンパク質がCDPKによってリン酸化されることが明らかになった。これらのcDNAがコードするタンパク質は、浸透ストレス、転写制御、葉緑体のタンパク質輸送や病害応答に関与すると推定され、CDPKが植物のCa2+シグナリング経路において様々な複合機能を持つことが示唆された。