抄録
植物の特徴ともいえる環境適応能力は植物細胞内のオルガネラの機能分化能力によって支えられている.最近の研究から,植物細胞は成長の段階や環境変化に応じて特殊化した機能を持つオルガネラを小胞体から形成する能力をもつことが分かってきた.本シンポジウムでは,私達が見出した新規オルガネラERボディに焦点を当てる.ERボディは巨大な紡錘形のオルガネラで,小胞体局在型GFPをシロイヌナズナで発現させると蛍光顕微鏡下で容易に観察できる.ERボディはアブラナ科植物の幼植物体全身の表皮に存在するが,植物体の成熟葉には存在しないという特徴を持つ.しかし,成熟葉に虫害や人為的な傷害を与えるとERボディが誘導されてくる.環境ストレスに弱い幼植物体は予めERボディを準備しており,一方,成長した植物体の葉では場合は,傷害を受けてから周囲の細胞にERボディを誘導する.ERボディには,β-glucosidase (PYK10)が大量に蓄積しており,PYK10はglucosinolatesを分解することにより病害虫の忌避物質を生産すると考えられる.ERボディの形成不全変異体nai1は,PYK10やこれに結合するlectinの量が顕著に減少していた.ERボディは病虫害に対処するために植物体が備えている新しい生体防御機構の一つとみなすことができる.
(1) Hara-Nishimura et al. (2003) Curr. Opinion Plan Biol., 6, 583-588.
(2) Matsushima et al. (2004) Plant Cell, 16, 1536-1549.