抄録
昨年トマトの国際ゲノムプロジェクトがスタートし、トマトはナス科モデル植物として位置づけられている。一方代謝物解析に関しては、トマト果実の一次代謝産物は網羅的解析がなされているが、二次代謝産物は個別に解析されてきたに留まる。今後増加が予想されるトマトのゲノム情報を代謝物蓄積制御機構の解明に結び付けていく上で、トマト代謝物に関してより多くの解析情報が求められる。
本研究では、トマト果実の全代謝成分情報を抽出および整備することを目的とし、各成分の精密質量を求めることが可能なLC-FT-MS(MS/MS)を用いて、成熟段階の異なるトマト(Micro-Tom)果実を組織別(果皮と果肉)に分析した。m/z値が 80-1500の範囲の化合物から、溶出成分の保持時間、Full MS、MS/MS、 UV吸収などの情報を抽出し、組成式の推定を行なった。推定成分の検索には、天然物データベース(KNApSAcKおよびDictionary of Natural Product)を利用した。その結果、トマト果実全体で500以上の代謝成分の存在が確認でき、その中には多くの未知成分が存在することが示唆された。また、果皮部、果肉部いずれも成熟によって蓄積成分が大きく変化することが認められた。今後LC-FT-MSにより集積された代謝物の詳細情報は、データベースとして公開していく予定である。