日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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タバコ光独立栄養培養細胞におけるキサントフィルサイクル色素合成の調節
淡路 恵里子*竹田 恵美
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p. 0536

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抄録
強光下で生育した植物では、弱光下で生育したものより緑葉中のキサントフィルサイクルに関与する色素総量が多いことが知られているが、その色素合成の調節機構については不明な点が多い。近年、多くの光合成関連遺伝子が葉緑体のredox signalによる発現制御を受けていることが報告されている。そこで本研究では、キサントフィルサイクル色素合成に対する光合成電子伝達系のレドックス制御の可能性について検討した。
タバコ光独立栄養培養細胞に、DCMUを10-7Mとなるよう培地に添加し、対照の細胞と共に強光で48時間培養し、色素分析を行った。その結果、対照の細胞ではクロロフィルあたりのキサントフィルサイクル色素量が約40%増加していたのに対し、DCMU処理した細胞ではほとんど変化がなかった。一方、通常は培養の際にCO2濃度を富化しているタバコ培養細胞をCO2富化なしで培養したところ、キサントフィルサイクル色素量の増加が認められた。光合成電子伝達系のレドックス状態をDCMUによって酸化側に傾けることにより、キサントフィルサイクル色素量の増加が抑制されたこと、逆に、CO2濃度の低下によってレドックス状態を還元側に傾けることにより、色素量の増加が認められたことから、キサントフィルサイクル色素合成への光合成電子伝達系のレドックス状態の変化による制御が示唆された。現在、カロテノイド合成酵素の発現に対する光強度やDCMU,CO2濃度の影響について検討中である。
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© 2008 日本植物生理学会
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