抄録
マイクロアレイを用いたイネの低リン応答機構のトランスクリプトーム解析は、リン代謝のみならず解糖系などの様々な代謝系に大きな変動が生じることを明らかにしてきた。一方トランスクリプトームは必ずしもタンパク質レベルの変動に対応していないと考えられる。さらに、これまでイネ根を対象としたプロテオーム解析は抽出操作の困難さから研究例は少ない。本研究ではイネ根から得られた同じ試料を用いてトランスクリプトームとプロテオーム解析を行い、KaPPA viewによるパスウェイ解析を試みた。
リンを与え続けた区を対象として解析したときに、トランスクリプトーム解析の結果、1)解糖系に関連した遺伝子の発現、2)Sulfolipid, Glycolipid合成系の発現が高まり、3)TCAサイクルを構成する遺伝子の発現、4)アニオンチャンネルをコードする遺伝子の発現はかわらず、5)アミノ酸合成にかかわる遺伝子の発現は低下した。このとき一日間リンを再施与した場合には特に解糖系の遺伝子群の発現が低下した。一方プロテオ-ム解析からは解糖系に関しては同様の反応が認められたものの、アミノ酸合成に関しては逆の傾向が認められ、また、アニオンチャンネルが-P区で有意に高まる現象が認められた。このようにトランスクリプトームで得られた代謝の変動パターンとプロテオームで得られたパターンは必ずしも一致しておらず、両者の発現パターンをプロットすると相関は認められなかった。