日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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極低温ピコ秒時間分解蛍光測定法による乾燥地衣類で起こる光阻害防御機構の解明
*小村 理行柴田 穣岩崎 郁子伊藤 繁
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p. 010

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抄録

地衣類は菌類と藻類が共生して光独立栄養的に生育し、種によっては細胞が乾燥すると光合成を停止、水を吸収すると光合成を再開させることで乾燥耐性を獲得している。PAMによる蛍光変動測定や極低温での定常蛍光スペクトル測定から、乾燥時には吸収した光エネルギーを熱へ変換することで、過剰な酸化力・還元力の蓄積による光化学系の破壊を防ぐことが推定されている。しかし、エネルギー変換のメカニズムは不明である。緑藻を共生藻にもつ地衣類トリハダゴケの5 Kから室温での蛍光寿命をピコ秒時間領域で測定し、光エネルギーが熱へ変換される過程を直接観測した。乾燥させた細胞と、水を再添加し段階的に光合成機能を回復させた細胞で比較し以下の結果を得た。(1)乾燥時の光化学系IIは通常より10倍以上蛍光寿命が短くなる。(2)乾燥時でも光化学系IIコアアンテナ内での励起移動が起こる。(3)光化学系IIの蛍光寿命は水添加後1分以内に回復する。(4)光化学系Iの蛍光は乾燥時に短波長シフトし寿命も若干短くなるが、光化学系IIほどの大きな変化はない。これらの変化は他の地衣類でも同様に観測された。また、高濃度のトレハロースに懸濁し乾燥させたホウレンソウ光化学系2でも蛍光の短寿命化が観測された。これらの結果を元に、乾燥時の地衣類がエネルギーを散逸させるメカニズムについて考察する。

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© 2006 日本植物生理学会
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