抄録
緑色硫黄細菌は鉄硫黄型の光化学反応中心を持ち、硫化水素を電子供与体として光合成を行う。そのうちChlorobium limicola f. thiosulfatophilumやChlorobium tepidumなどは硫化水素の他にチオ硫酸塩も電子供与体として利用できるが、その酸化機構に関しては不明な点が多い。今回、我々はC. tepidumの細胞からチオ硫酸塩酸化酵素を単離、精製したので報告する。細胞抽出物を、40-80%飽和硫安分画後、陰イオン交換クロマトにかけたところ、通過した画分はウマのシトクロームcの還元活性を指標としたチオ硫酸塩酸化活性を示した。これを、陽イオン交換クロマトに吸着、直線的NaCl濃度勾配で溶出させたところ、複数の蛋白質ピークが分離されたが、いずれのピーク画分も単独では活性を示さなかった。そこで複数の画分を混合したところ、高い活性を示した画分の組み合わせが得られたので、これらの画分をさらに精製後、そこに含まれるペプチドのN末端を決定した。C. tepidumuの全ゲノム配列情報からこれらのペプチドをコードする遺伝子は遺伝子クラスターとして存在し、これはα—プロテオバクテリアに属する Paracoccus pantotrophusで報告されているsox (sulfur oxidation)遺伝子クラスターとよく似たクラスター構造であった。今回精製された成分が光化学反応中心への電子供与に関与しているかどうか現在検討している。