抄録
ヘリオバクテリアはグラム陽性菌に属する嫌気性光合成細菌で、主要な光合成色素としてバクテリオクロロフィル g を持つ。ヘリオバクテリアの光化学反応中心 (RC) は、光化学系 Ι や緑色硫黄細菌の RC と同様の鉄硫黄型反応中心に属する。鉄硫黄型反応中心は、フェレドキシン(Fd)を直接光還元できる。これまでに我々は、ヘリオバクテリア H. fasciatum から 2[4Fe-4S] 型の Fd を4 種類 (Fd A、Fd B、Fd C、Fd D) 単離し、その性質を前回報告した。今回は、H. fasciatum からRCを単離・精製し、その性質を調べた。また、精製した RC と4種の Fd との電子伝達反応を、ホウレンソウの FNR を介した NADP+ 光還元活性で調べたので報告する。嫌気下で単離・精製したRCに Fd BまたはFd Dを加えて光照射したところNADP+ の光還元が観察された。一方、同条件で Fd A または Fd C を加えて光照射したところ NADP+ の還元は観察されなかった。現在単離・精製した RC にどのような鉄硫黄クラスターが結合しているか、液体ヘリウム温度下での ESR 測定によって調べている。