日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヨシ茎基部で観察される塩誘導性顆粒の生理・生化学的解析
*金井 雅武樋口 恭子小西 照子石井 忠藤田 直子中村 保典前田 良之吉羽 雅昭但野 利秋
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p. 048

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抄録
ヨシ(Phragmites communism)は耐塩性植物であり、塩類集積土壌においても地上部Na濃度を低く保つことができる。これは根から吸収されたNaを茎基部(根と地上部の境界)で再び根に送り返す機構を持つためとされている。本研究では塩感受性のイネ (Oryza sativa)を対照植物とし、イネ基部、ヨシ茎基部のイオン移行抑制能を定量的に評価した。ヨシ茎基部はイネ基部よりもイオン移行抑制能が高く、特にNaCl処理において抑制は顕著だった。細胞内Na特異的蛍光プローブを用いた蛍光顕微鏡観察を行ったところイネ基部では蛍光が組織および細胞に広がっていたが、ヨシ茎基部では維管束周辺の細胞内に顆粒状の構造物が観察され、その顆粒と蛍光の位置は一致していた。顆粒の成分は糖が78%(w/w)で、グルコースのみが検出され、グルカン鎖長分布から主成分は澱粉であることが示された。この顆粒のNa含量は0.21%(w/w)で茎基部の澱粉含量より換算すると、ヨシ茎基部中の全Naのうち少なくとも17%が顆粒に含まれていることになる。また顆粒のK含量は0.22%(w/w)でNa含量と同程度だが、この実験に使用したヨシ茎基部の全Na含量は全K含量の1/10であった。以上のことからこの顆粒はNaを選択的に集積しており、ヨシ茎基部のNa移行抑制機構の中核を担っていることが示唆された。
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© 2006 日本植物生理学会
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