抄録
ポリアミンは全ての生物に存在しており、一般的にプトレッシン、スペルミジン、スペルミンが主要構成成分である。これまでポリアミンは植物の塩ストレス反応において重要な役割を果たすことが報告されているが、その詳細は不明である。シロイヌナズナには二種のスペルミン合成酵素遺伝子(SPMSとACL5)が存在し、これらの遺伝子産物がスペルミジンにアミノプロピル基を付加することでスペルミンが合成される。今回、植物体内にスペルミンを合成できない植物体であるスペルミン合成欠損株(acl5/spms)を用い、塩ストレス応答時のスペルミンの役割を検討した。
播種後10日目の実生を225mM NaClを含むMS培地に移すことで、塩ストレスを植物に与えた。その結果、スペルミン合成欠損株は塩ストレスに対して野生株よりも感受性が高いこと、この塩に対するスペルミン合成欠損株の高感受性は外部からプトレッシンやスペルミジンを加えても回復しないがスペルミンを加えることで回復すること、また野生型にスペルミジン・スペルミン合成酵素の阻害剤であるシクロへキシルアミンを加えると塩に高感受性になること、を明らかとした。これらの結果から、塩ストレス環境下での植物の耐性にスペルミンが関与していることが強く示唆された。