抄録
イネ低温誘導性遺伝子lip19(the gene encoding low-temperature induced protein, clone #19)は、特徴的な塩基性領域に続き7アミノ酸ごとにロイシンが9回繰り返される148個のアミノ酸からなるbZIPタンパク質をコードする。シロイヌナズナの場合、全ゲノム解析により75個のbZIPタンパク質をコードする遺伝子が存在し、共通のドメインに基づいて10のグループ(A-IそしてS)に分類されている。本研究ではSグループのメンバーの中で構造的にlip19と高い相同性を示したAtbZIP2、AtbZIP11及びAtbZIP53を選択し、分子生物学的アプローチを用いてこれらの遺伝子の特徴付けを行った。3つの遺伝子の産物は全て核に局在し、ACGT をコアとするhexamer やC/G box hybridと呼ばれるDNA配列に強く結合した。また、これらのbZIPタンパク質はいずれも転写活性化因子であった。これら遺伝子の機能を明らかにするために様々な非生物学的なストレスやホルモン処理に対する発現解析を行ったところ、AtbZIP11はcytokininに、AtbZIP53は塩ストレスに特徴的に応答することを見出した。さらに詳細な解析を行うために、現在この二つの遺伝子の過剰発現植物を作成し研究を進めている。