抄録
アクチン繊維は植物細胞の生長や分裂に重要な役割を果たしている。しかし、細胞分裂におけるアクチン繊維の構造変化やその役割については不明な点も多い。我々はこれまでにアクチン繊維を可視化したタバコBY-2の形質転換細胞BY-GFを確立し、分裂中期の細胞表層部に2対のバンド様表層構造MFTP(microfilament twin peaks)が形成されること、このMFTPの中間の位置に細胞板が形成されることを見出してきた。
本研究ではBY-GF細胞を同調培養し、分裂期の様々な時期にサイトカラシンDをパルス処理して一時的にアクチン繊維構造を破壊することで細胞板形成におけるアクチン繊維構造の役割について検討した。その結果、MFTPが出現する分裂中期の繊維構造を破壊したところ、歪んだ細胞板を持つ細胞が出現することを見出した。その一方で、フラグモプラスト様構造が見られる分裂終期の繊維構造を破壊しても細胞板形成に大きな影響は見られなかった。さらに、蛍光試薬FM4-64により細胞質分裂時の膜輸送系を可視化したところ、アクチン繊維に沿って動くエンドソームが観察された。さらに、FM4-64は形成中の細胞板に一過的に蓄積したが、アクチン繊維を破壊したところ、細胞板におけるFM4-64の蛍光輝度が減少した。これらの解析結果から、細胞板形成におけるアクチン繊維の役割について考察する。