日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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高温ストレスにより生成するマロンジアルデヒドが植物に与える生化学的・分子生物学的影響
*山内 靖雄田中 浄脇内 成昭杉本 幸裕
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p. 081

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抄録
多価不飽和脂肪酸は植物生体膜の主要な構成成分であるが、それは容易に過酸化され反応性の高い低分子化合物を生成することが知られている。本研究では、高温ストレス負荷植物で発生する主要な多価不飽和脂肪酸過酸化生成物・マロンジアルデヒド(MDA)がタンパク質機能や遺伝子発現に与える影響を調べた。光照射下で高温ストレスを与えた植物体を用い、タンパク質に結合したMDAを特異的に認識するモノクロナル抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った結果、ストレスにともない葉緑体局在タンパク質の化学修飾が検出されたことから、葉緑体がMDAによりダメージを受ける主なオルガネラであることが考えられた。一方、高温条件下でMDAが多く生成しタンパク質に結合することから、MDAが高温ストレスのシグナル分子として作用している可能性を考え、代表的な高温ストレス誘導性タンパク質である熱ショックタンパク質(HSP)の遺伝子発現を指標に、MDAのシグナル分子としての作用を検討した。高温ストレス下のアラビドプシスのHSP遺伝子発現量をRT-PCRにより調べたところ、MDA量の変化と相関した発現量の増加が見られた。さらにMDAは非ストレス下の植物のHSP遺伝子を誘導した。以上の結果から、高温ストレスにより発生するMDAはタンパク質毒性を示すのみではなく、高温ストレス応答機構におけるシグナル分子として機能している可能性が示された。
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© 2006 日本植物生理学会
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