抄録
イネ科植物の葉身-葉鞘境界部 (ラミナジョイント, LJ)と葉鞘-茎境界部(葉枕)は、葉身、葉鞘、茎本体とは異なり淡緑色を示す。トダシバは葉身の他、葉鞘や茎等にも光合成組織を発達させ、クランツ型構造とC4植物に特有な光合成酵素の発現パターンを示す。本研究では、光合成代謝との関連からLJと葉枕の構成細胞における構造と光合成酵素の発現様式を検討した。LJと葉枕の表皮には気孔はほとんど観察されなかった。内部組織にはクランツ型構造は見られず、単一種の緑色柔細胞が発達していたが、葉緑体の量は他の緑色器官に比べ少なかった。葉緑体はグラナを持ち、葉枕の葉緑体は特に多量のデンプン粒を蓄積していた。Western blot解析により、LJと葉枕はPEPC, NADP-ME, Rubisco, PPDKを蓄積していることが確認されたが、その量は葉身、葉鞘、茎に比べ少なかった。また、LJと葉枕で多量に発現しているNADP-MEは、葉身、葉鞘、茎で多量に発現しているNADP-MEと分子量が異なった。免疫電顕法による解析から、LJと葉枕では多量のRubisco（葉緑体）と少量のPEPC（細胞質）、PPDK（葉緑体）が同じ細胞内に発現していることが見出された。以上から、LJと葉枕では葉身等で見られる2種細胞分業型のC4代謝とは異なった、単一細胞型のC4様代謝が働いていることが示唆された。
