抄録
BOR1はシロイヌナズナより単離された排出型ホウ素トランスポーターであり、根の導管へのホウ素の積み込みに働く。これまで、シロイヌナズナゲノムに存在する6つのBOR1相同遺伝子のうち、BOR2が低ホウ素栄養条件下での根の細胞伸長に重要であることを示した。今回は、BOR3、BOR4、BOR5に注目し、これらが異なる細胞特異的発現パターンをもつ排出型ホウ素トランスポーターであることを報告する。まず、RT-PCRを行ったところ、根と地上部の双方でBOR3-5のmRNAの蓄積が検出された。各遺伝子のプロモーター制御下でGUSを発現する形質転換体を観察したところ、BOR3は根の皮層細胞と孔辺細胞、トライコームに、BOR4は根の内皮細胞に、BOR5は根の中心柱と葉のトライコームに、強くGUS染色が認められた。次に、BOR3-5を酵母で発現させたところ、菌体内ホウ素濃度の低下が見られた。これよりBOR3-5がBOR1と同様にホウ素の細胞外への排出能を持つことが示唆された。最後に、各遺伝子のT-DNA挿入株を用いて生理解析を行った。一重挿入株では野生型株との違いは認められなかったが、bor1-3/bor2-1/bor3-1の三重挿入株ではbor1-3/bor2-1の二重挿入株と比較して、低ホウ素欠乏条件下でのみ、より深刻な根の生育抑制が観察された。BOR3が根の伸長においてBOR1-2の補助的な役割を持つと考察している。