抄録
イネにおけるホウ素輸送能を明らかにする目的で、イネの遺伝子群の解析を行っている。第46回日本植物生理学会年会で、シロイヌナズナのBOR1に最も高い相同性を示すOsBOR3は、BOR1同様ホウ素排出能を持つトランスポーターであり、ホウ素欠乏条件下でのイネの生育に必要であることを発表した。本発表では新しく得られた知見について述べる。
OsBOR3の遺伝子破壊株は、野生型株と比較して、ホウ素欠乏条件下での生育が阻害される。この生育阻害が、植物体のホウ素含量の低下に起因するものであるかを明らかにするために、ホウ素通常条件、及び欠乏条件下での植物体内のホウ素含量を測定した。遺伝子破壊株の新鮮重当たりのホウ素含量を野生型のものと比較した場合は、両者間での差異は認められなかった。しかし、植物体当たりのホウ素含量は、ホウ素欠乏条件下で遺伝子破壊株の方が野生型より低くなる傾向が見られた。これは、OsBOR3がホウ素の土壌から地上部への輸送に関与することを示唆している。
また、OsBOR3の発現の組織特異性を詳しく解析するため、OsBOR3プロモーター:GUSのコンストラクトを導入したイネの根を観察したところ、根端では主に外皮に、分化の進んだ部分では外皮と内皮の両方に発現が見られた。OsBOR3の局在は根の発育段階によって異なっており、その生理的な役割も根の発達に従って変化するものと考えている。