抄録
高等植物には概日リズム(時計)により制御される数多くの高次生理現象が観察されている(葉の開閉、光周性花成制御)。このような背景から、最近になりモデル植物シロイヌナズナにおける時計研究が急速に進展し、主に遺伝学的な解析から多くの時計関連因子が同定・報告されてきた(Myb型転写因子CCA1やLHY など)。また、我々が報告したTOC1/PRR1を含む擬似レスポンスレギュレーターPRR因子群(PRR3、PRR5、PRR7、PRR9)も中心振動体構成因子の最有力候補である。事実今までに、各PRRファミリー因子の構成的発現植物体・機能欠損変異体に関する包括的な解析から、各PRR因子が個性的でかつ協調的な機能を発揮して中心振動体近傍で機能していることを示唆してきた。しかし、最も肝心なPRRタンパク質の分子機能は不明であり、またタンパク質レベルでの安定性やリズム変動に関しての解析は手つかずであった。これらの問題にアプローチするため、今回はエピトープタグを付けたPRR1やPRR9タンパク質を発現する形質転換植物体を確立した。これらを用いて、PRR因子のタンパク質レベルでのリズムを直接検出・解析した。さらに、PRRタンパク質の安定性に影響を及ぼす生育条件(光シグナルなど)に関しても解析した。これらの結果をまとめながら、TAP法を用いた時計複合体単離の可能性に関しても考察する。