抄録
プラスチドDNAは多くのタンパク質とともに核様体と呼ばれる複合体を形成している。エンドウとダイズの単離プラスチド核様体の主要な構成タンパク質として亜硫酸還元酵素(SiR)が同定され,in vitro転写系においてSiRが転写を抑制することが明らかになった。SiRはフェレドキシンから電子供与を受け亜硫酸塩を硫化水素に還元する酵素で,従来プラスチドストロマに存在すると考えられてきた。単離エンドウ葉緑体を抗SiR抗体で免疫蛍光染色したところ,SiRが葉緑体内で核様体に局在することが確認された。エンドウSiRの組換えタンパク質を大腸菌発現系を用いて調製し,吸光スペクトルからホロ型酵素を得た。この組換えSiRを用いて,ゲルシフトアッセイによる解析を行った。タンパク質濃度に依存して複数のシフトしたバンドが検出され,これはDNAに結合しているSiR分子の数を反映したものと考えられた。見かけ上の解離定数は40 bp二本鎖DNAで~25 nM,20 bp二本鎖DNAで ~225 nMであった。一本鎖DNAをプローブとした場合でもバンドのシフトが確認された。また,通常の二本鎖DNAとPoly(dI-dC)に強い競合が見られた。これらの結果から,SiRは配列非特異的にプラスチドゲノム全体に結合することが示唆され、これが転写抑制に関与すると考えられた。