日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

At-nMat1a (グループIIイントロンのマチュレースと相同性のある核遺伝子)の変異はミトコンドリアNAD4のスプライシング異常と大幅な炭素代謝の変動を引き起こす
*中川 直樹桜井 直樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 180

詳細
抄録
細胞壁の主成分であるセルロースの合成は大量に栄養源を消費する植物独自の代謝である。大量のセルロース合成のために植物のミトコンドリアは細胞質、細胞膜での代謝と呼応して効率よい基礎炭素代謝を司る必要があると思われる。しかしミトコンドリア機能とセルロース合成の関連性を示した研究例は殆どなかった。
我々はセルロース合成機構を探るため、セルロース合成阻害剤による根端の形態変化がおきにくい変異体(css1) を単離し解析してきた。この変異体はセルロース合成阻害剤に対する応答性のみならず、アミノ酸代謝(アラニンの蓄積)、脂質代謝、糖感受性、セルロースとデンプンの蓄積量に変化が見られた。この変異体の原因遺伝子はAt-nMat1a (グループIIイントロンのマチュレース(mat-R)と相同性のある核遺伝子)と判明した。ミトコンドリアNAD4のスプライシングがこの変異体では異常であることもわかった。ショ糖合成酵素は細胞質で糖代謝に関わるだけでなく、細胞膜に結合しセルロース合成にも関与する重要な酵素である。我々の分析から、この変異体でのミトコンドリア機能の低下が何らかの経路を通じて細胞質に局在するショ糖合成酵素の割合を高め、それによりセルロースの蓄積量が減少することが示唆された。
著者関連情報
© 2006 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top