抄録
1989年に植物ミトコンドリアのRNAエディティングが発見されて以来多くの研究がなされてきたが、現在でもRNAエディティング部位識別に係わるシス配列、ガイド配列(シス及びトランス、DNA or RNA)、トランス因子(タンパク質)、デアミナーゼは確定されていない。このRNAエディティングの分子装置についての知見を得るため我々はRNAエディティング部位の比較解析を進めている。
我々はタバコミトコンドリアのDNA塩基配列を決定し、36種類のタンパク質、3種類のrRNA、そして、21種類のtRNAをコードする遺伝子があることを報告した(2005年)。その基盤情報を基にRT-PCR法で36種類のタンパク質遺伝子のRNAエディティング部位519箇所を決定した。そして、RNAエディティング部位の決められているタバコ、シロイヌナズナ、イネ、ナタネの29遺伝子について塩基配列をマルチプルアライメントし、780箇所のRNAエディティング部位をマークした。その結果、4種の植物で共通な部位は170箇所(22%)しかなく、303部位(39%)は種固有であった。これらの結果から、
●陸上植物が多様化した後、それぞれの系統ごとに独自にRNAエディティング部位を獲得固定した。
●トランス因子は多数のRNAエディティング部位をまとめて識別する。
●そのトランス因子も植物系統ごとに独自に進化した。
と推定した。