日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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人工DNA constructによるクラミドモナスミトコンドリアの形質転換:可能な株の特徴とメカニズムの解析
*大濱 武山崎 朋人黒川 さゆり
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p. 183

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抄録
Randolphらはクラミドモナスの呼吸欠損株に対して、野生株から調製した線状ミトコンドリアゲノムを丸ごとパーティクルガンで撃ち込むことにより呼吸能を回復した株を得ている。しかし、続報がなく、人工的なDNA-constructの導入について成功例の報告はない。我々は、野生型のCOB遺伝子、COXI遺伝子を持つ形質転換用DNA construct を作製した。これを利用して、ゲノム左端及びCOB遺伝子の欠損、COB遺伝子内、COXI遺伝子内に点突然変異を持つ5種の呼吸欠損株について形質転換を試みた。その結果,形質転換が可能な株とそうでない株があることが判明した。呼吸能を回復した元株は、ミトコンドリアゲノムの左末端からCOB遺伝子の途中のどこかまでを欠損している呼吸欠損株に限られ、形質転換体が得られない元株は塩基置換あるいは、フレームシフトによる呼吸能欠損株であった。このことは、末端を欠いたゲノムを持つミトコンドリアでは、その修復のために高い相同組み換え活性が誘導されているが、安定したゲノムを持つ株では、その活性が低いために形質転換体が得られないことを示唆している。またPCR解析の結果,初期には様々な部位で相同組み換えを起こした非野性型ゲノムが存在し,2次的な組み換えを経て野生型ゲノムが構築されることがわかった。これまでオルガネラの形質転換が成功していない生物種でも、組み換え活性を誘導できれば、外来遺伝子を導入できる可能性を示唆している。
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© 2006 日本植物生理学会
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