抄録
細胞の不等分裂は体制確立に不可欠な過程と考えられる。植物の発生様式は分裂組織においてある細胞集団が未分化状態を維持しながら一方で別の細胞集団が分化し器官原基を形成することにより体制を築き上げていく。このように分裂組織を一生維持する点で後生動物と大きく異なっており、分裂組織に含まれる植物の幹細胞がどのように形成され、維持されているのかは後生動物と異なる分子機構を備えていると考えられているが、よくわかっていない。
ヒメツリガネゴケ原糸体は一列に細胞が並んだ組織であり、頂端に存在する幹細胞により作られる。この幹細胞由来のプロトプラストの最初の分裂は不等分裂であり、頂端幹細胞と分化細胞に分裂する。
我々はヒメツリガネゴケ一過性過剰発現系によりプロトプラスト再生に異常を引き起こす58遺伝子を報告している。これらの遺伝子群の中で幹細胞形成維持に関与している因子を特定するために相同組換えを利用し、各遺伝子のC末端側に蛍光タンパク質YFPを挿入した発現解析ラインを順次作成している。その結果、pphn36p08-citrine融合タンパク質が幹細胞で特に強く発現していることが認められた。この遺伝子は推定アミノ酸配列から植物特異的なVQドメインを持つ機能未知のタンパク質をコードしていることがわかった。現在pphn36p08の遺伝子破壊株を作成しており、発現解析ラインの結果と併せてその表現型を報告し、不等分裂における機能を考察したい。