抄録
本研究では、乾燥に耐性のあるラン色細菌Nostoc commune と、耐性のないラン色細菌Synechocystis sp. PCC6803を用い、乾燥時の光化学系 II(PS II)反応中心活性失活の意味について詳しい検討を行った。N. commune は世界中に広く分布する陸生ラン色細菌で、比較的丈夫なゼラチン質の中に糸状体が大量に埋もれる形で集合体を形成し、高い乾燥耐性を有することが知られている。
N. commune を高張のソルビトール溶液に浸すことで脱水処理を行うと、光合成の失活と平行して、PS II反応中心活性が失活する。一方、Synechocystis PCC6803では 、光合成活性が失活してもPS II反応中心活性は一定のレベルに維持されていた。そこで、種々の濃度のソルビトール溶液で処理したサンプルについて、強光、及び高温ストレスが与える影響について PAM 法を用いて検討した。その結果、Synechocystis PCC6803は、脱水によって高温、強光ストレスへの耐性が低下し、細胞が重大なダメージを被るが、N. commune は脱水・乾燥することにより、強光及び高温に対する耐性が上昇するという結果を得た。
これは、光合成が停止した後もPS II反応中心活性が、残存することによる光阻害の発生が原因であると考えられる。