抄録
私たちは、斑入り突然変異体var2を用いて植物が斑入りになる機構を調べている。var2の原因遺伝子は葉緑体局在型ATP依存性メタロプロテアーゼFtsH2をコードしており、チラコイド膜で光障害を受けた光化学系タンパク質の修復機構(特に光化学系II反応中心D1タンパク質の分解)に関与する。したがって、白色セクターの出現はこの光障害に起因すると予想される。光化学系における光障害タンパク質の分解は非常に重要であり、分解による修復が滞ると電子伝達も阻害を受け活性酸素 (ROS) が発生すると考えられる。そこで今回は斑入りの葉を用いてROSの検出と斑入りとの関係を調べた。通常の栽培条件で育成したColumbia, var2, 及びサプレッサーsv2.52の葉を superoxideと反応するNBT、H2O2存在下でperoxidaseと反応するDABにより組織染色したところ、var2の緑色セクターにおいて特異的ROSが検出された。NBTでは葉緑体特異的な局在も観察され、高レベルのROSは蛋白質修復の欠損による光阻害作用に起因すると考えられた。また、エバンスブルー染色では白色組織は完全には染色されず、細胞死を起こしているのではないことも示唆された。斑入り形成にはROSの閾値が存在することが予想されるため、現在、細胞内におけるROSの定量と斑入りパターンの解析を進めている。