抄録
【目的】細胞質のリンゴ酸脱水素酵素 (MDHcyt)は、チオレドキシンアフィニティー・クロマトグラフィーによって捕捉され、チオレドキシンの新規の標的タンパク質であることが示唆れている。そこで、MDHcytが実際にチオレドキシンと相互作用し、その活性が酵素の酸化還元反応の状態によって調節されるかどうかを生化学的に解析した。【結果】MDHcytの組換え体タンパク質を大腸菌で発現させ、活性を保持した酵素を得た。低濃度のCuCl2存在下で完全に酸化させると、酵素活性が完全に失われた。この活性は、酵素をチオレドキシンと低濃度のDTTでインキュベートすることで容易に回復した。また、MDHcytの酸化還元に依存した活性制御は、二量体形成と関係することがわかった。制御に関係するシステインを同定するために、分子内の6個のシステインをそれぞれセリンに置換した変異体を作成し、その酸化還元応答を調べた。さらに、ペプチドマッピングによって分子内(分子間)に形成されるジスルフィド結合を同定した。以上の一連の実験により、MDHcytが新規のチオール酵素であることが生化学的に確認された。