抄録
原核生物においてRelA/SpoTはセカンドメッセンジャーppGppの合成または分解を栄養状態の変動に応じて行なう。ppGppはRNA合成酵素に直接作用し、多くの遺伝子の転写を正または負に制御する。このppGppを介した一連の制御機構は緊縮応答と呼ばれる。近年高等植物においてRelA/SpoTのホモログRSH(RelA SpoT Homologs)の存在が明らかにされ、それらは葉緑体で機能することが示唆されている。我々は高等植物の高次機能に緊縮応答がどのように関与するのかを明らかにすべく、シロイヌナズナを用いてRSHの解析を進めている。
これまでにシロイヌナズナから3つのRSH(RSH1~RSH3)が報告されていたが、ゲノム塩基配列を精査したところ4つ目のRSH(RSH4)の存在を確認した。RSH4はN末端にppGpp合成の触媒部位を持ち、C末端には明確なカルシウム結合部位が存在していた。大腸菌と紅色光合成細菌のRelAまたはSpoT変異体を用いた相補実験の結果、RSH4はバクテリア型のRelA変異を相補するが、SpoT変異は相補しないことがわかった。このことはRSH4がppGppの分解活性は持たないことを示唆している。精製したRSH4のppGpp合成活性はCa2+依存的であった。またRSH4変異はシロイヌナズナにおいて稔性に影響を及ぼした。得られた結果をもとにRSH4の機能を考察する。