日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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傷害に応答して可塑的に変化するシロイヌナズナのトライコーム密度制御の遺伝学的解析
*吉田 祐樹高林 純示
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p. 286

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抄録
植物表皮のトライコーム(毛状細胞)は種によって様々な機能を持つが、害虫に対する構造的なバリアとなる例が数多く報告されている。また、害虫の食害を受けた植物個体では、それ以後に形成する葉のトライコーム密度を高くするという防衛反応が誘導され、この現象はシロイヌナズナでも知られている。そこで傷害シグナル伝達による表皮細胞パターン形成の制御を明らかにするために、シロイヌナズナを用いた遺伝学的解析を行なった。トライコーム密度増加にはジャスモン酸(JA)の生合成とSCFCOI1複合体を介したJAのシグナル伝達が必須であり、シロイヌナズナの形態形成におけるJAの新規機能を明らかにできた。また、トライコーム分化の開始に重要なGL1遺伝子の弱いアリルgl1-2変異体はほとんど無毛だが、傷害処理によりトライコーム形成が野生型並みに回復することを見いだした。gl1-2のトライコーム回復を指標にした簡便かつ感度の高いアッセイ系を構築し、R2R3-MYB転写因子のGL1と協調して表皮細胞分化に関わる転写因子GL3とMYB23が、JAに応答したトライコーム密度制御にも関与することを明らかにした。JAシグナルと表皮細胞分化をつなぐ因子を探索する目的で、gl1-2をEMS処理してトライコーム回復が変化(低下または亢進)した変異体のスクリーニングを進めているので、それらの解析結果についても報告する予定である。
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© 2006 日本植物生理学会
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