日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ゼニゴケ懸濁培養細胞の乾燥耐性獲得におけるストレス応答タンパク質の関与
*畑中 理恵菅原 康剛
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p. 307

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抄録
これまでに、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.)の懸濁培養細胞を高濃度のショ糖を含む培地で前培養すると乾燥処理後に高い生存率が維持されることを明らかにした。このとき糖は細胞内に蓄積し、細胞の乾燥に対して保護的に作用していると考えられる。糖のほかにも、ストレス応答タンパク質の関与が予想される。そこで、高濃度の糖を含む培地で前培養を行った時に合成されるタンパク質の細胞の乾燥耐性への関与について調べた。
細胞をシリカゲル上で24時間乾燥すると含水量は0.1gH2O/gDW以下まで低下する。このような細胞の生存率を再培養によって調べると、前培養なしでは0%だが、0.5Mショ糖培地で前培養すると約80%になった。ショ糖以外で培地の浸透圧を上げた場合、部分的に細胞の乾燥耐性が上昇した。細胞を0.5M糖培地で前培養すると熱安定性タンパク質の発現パターンが変化したが、前培養培地の浸透圧変化に応答して新たにタンパク質合成が起きたためと考えられる。シクロヘキシミドを0.5M糖培地に加えて前培養を行うと、24時間乾燥後の細胞の生存率はほぼ0%だったが、4時間乾燥(0.15gH2O/gDW以上)では約80%であった。このことから、ゼニゴケ培養細胞の乾燥耐性の増大にはショ糖が大きな役割を持つが、前培養時に合成されるタンパク質も細胞の乾燥耐性増大に関与していることが示唆された。
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© 2006 日本植物生理学会
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