抄録
乾燥耐性能を持つ陸生ラン藻は、土壌改善に貢献する重要な役割を持つ生物として注目を集めつつあるが、ラン藻の乾燥耐性メカニズムは未解明な部分が多い。我々はこれまでにAnabaena sp. PCC 7120における乾燥時の遺伝子発現について網羅的に解析してきた。しかしながら、耐乾性の獲得には、乾燥ストレス時のダメージを回復していく再水和過程も重要であると考えられる。
そこで再水和時のDNA microarray解析を行った。その結果、再水和により多数の遺伝子の発現量が増加することを見出した。その中で我々はcAMPにより活性化される転写因子ancrpBに着目した。再水和時には一過的に細胞内cAMP濃度が増加した。また、ancrpB破壊株は野性株に比べ再水和時の酸素発生活性の回復が鈍く、AnCrpBが乾燥からの回復過程において重要な役割を果たしていることが示唆された。本発表では、乾燥・再水和過程における遺伝子発現プロファイル、また、再水和過程におけるcAMPシグナリングについて議論する。