抄録
砂漠環境に自生する野生スイカは、乾燥強光下で活性酸素ヒドロキシルラジカル消去能に優れた新規適合溶質シトルリンを葉内に30mMも高蓄積する。しかしながら、その合成の制御機構は全く明らかにされていない。そこでシトルリン蓄積機構を解明するために、乾燥強光時のシトルリン代謝経路を担う11種の酵素の挙動ならびにシトルリン合成の窒素源について解析した。
まず、シトルリン代謝を担う11種の酵素活性を測定したところ、経路の初発および第2段階を担う、N-acetylglutamate synthaseとN-acetylglutamate kinase、シトルリンの基質であるカルバモイルリン酸を生合成するcarbamoyl phosphate synthetaseが乾燥によりそれぞれ約7、7、3倍に活性が増加していた。また、シトルリン分解酵素であるArgininosuccinate synthaseの活性が5分の1に低下していた。一方、その他の生合成酵素の活性は乾燥前後で変化がなかった。
次に、シトルリン合成の窒素供給源として可溶性タンパク質の約5割を占めるRuBisoCOに注目し、乾燥強光に伴い主に下位葉において含有量が低下することを見出した。
以上のことから野生スイカは、乾燥強光時にRubisCOを分解しシトルリン生合成に再利用していると考えられ、窒素代謝を巧妙に制御し耐性を獲得していると考えられる。