抄録
アブシジン酸(ABA)は、種子登熟、気孔の閉鎖や環境ストレスに対する応答機構に関わることが知られている。我々はこれまでにABA高感受性を示すahg変異体(ABA hypersensitive germination)を単離し、解析を行ってきた。今回はahg1変異体の解析結果について報告する。
ahg1は、種子発芽においてABA、塩、浸透圧、糖に対し高感受性を示すが、植物体ではABA高感受性示さない。ahg1の種子休眠性を調べたところ、野生型に比べ種子休眠性が高まっていた。一方、ahg1植物体は乾燥ストレスに対し、野生型とほとんど変わらなかった。種子と浸透圧ストレス処理を行った植物体の内在性ABA量を測定したところ、乾燥?種子ではahg1は野生型に比べABA量が約1.3倍高いのに対し、浸透圧ストレス処理した植物体では野生型と大差がなかった。以上の結果から、AHG1は主に種子で機能することが予想された。
このahg1の原因遺伝子をマッピングにより同定したところ、新たなプロテインフォスファターゼ2C(PP2C)をコードすることが明らかとなった。我々は既に、種子で強い表現型を持つahg3の原因遺伝子が別のPP2CであるAtPP2CAをコードしていることを報告している。本発表では、AHG1とAHG3のABA応答における役割について議論する。