日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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原始シアノバクテリアGloeobacter violaceusの光依存性プロトクロロフィリド還元酵素の機能解析
*池田 礼増田 真二土屋 徹宮下 英明三室 守太田 啓之高宮 建一郎
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p. 337

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抄録
シアノバクテリアGloeobacter violaceusはチラコイド膜を持たず、酸素非発生型光合成細菌と同様に光化学系が細胞膜上に呼吸系と共存した生物である。また、分子系統解析の上では最も初期に分岐したシアノバクテリアとされ、原始的な形質を残した酸素発生型光合成生物と考えられている。
プロトクロロフィリド(Pchlide)還元酵素はポルフィリンD環を還元することによりクロロフィルの直接の前駆体クロロフィリドを生成する。このPchlide還元酵素として、光依存性酵素(LPOR)と光非依存性酵素(DPOR)が知られている。LPORはクロロフィル合成の光依存性を決定する重要な酵素として働いており、酸素発生型光合成生物のみに見られることから、シアノバクテリアが誕生した後に獲得した酵素であると考えられているが、その起源は明らかではない。本研究ではLPORの進化的知見を得ることを目的に、大腸菌に発現させたG. violaceusのLPORの酵素学的検定を行い、現在までに調べられたLPORの値と比較検討した。その結果、G. violaceusのLPORのPchlideに対するKm値はSynechocystis sp. PCC 6803のそれよりも一桁ほど低く、高等植物のLPORの値に近いことが分かった。このことは、始原シアノバクテリアが獲得したLPORのPchlideに対する親和性は高く、実質的に利用していたことが示唆される。
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© 2006 日本植物生理学会
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