抄録
青色光による気孔開口時には、孔辺細胞の細胞膜H+-ATPase活性上昇を介して膜電位が過分極し、過分極依存的にK+が流入する。一方、孔辺細胞には過分極依存性Ca2+チャネル活性が存在することが報告されている。しかし青色光により膜電位が過分極した際にCa2+チャネルが働いているかどうかは調べられていない。そこで、Ca2+結合性発光蛋白質エクオリンを導入したシロイヌナズナから調製した孔辺細胞プロトプラストで青色光による細胞内Ca2+濃度変化を測定し、過分極依存的なCa2+流入とK+チャネルとの関係を調べた。
細胞外Ca2+が1mM, K+が0.01 mM 以下では、青色光照射後約2分後をピークとするCa2+濃度上昇が見られた。このCa2+濃度上昇は、Ca2+チャネル阻害剤、Ca2+キレート剤で抑えられた。また、青色光による細胞膜H+-ATPase活性上昇のピークも光照射後約2分後であること、青色光による細胞膜H+-ATPase活性上昇がないphot1 phot2二重変異体ではCa2+濃度上昇は見られないことから、過分極に依存して細胞内へCa2+が流入していることが示唆された。一方、細胞外K+濃度が0.1 mM以上では、Ca2+濃度上昇は見られなかったが、K+チャネル阻害剤存在下では観察された。以上から、孔辺細胞には青色光照射下で過分極依存的にCa2+が細胞内に流入する活性はあるが、生理条件ではK+流入が優先していることが分かった。