抄録
硝酸吸収メカニズムの解明には高親和性硝酸トランスポーター(NRT2)だけではなく、NRT2の機能発現に関与すると考えられているNAR2にも注目する必要がある。本研究はCaSO4溶液あるいは同溶液に (NH4)2SO4を加えた溶液で20時間前処理した後、KNO3溶液に浸漬したイネ幼植物体を供試材料とし、ORFが同一であるNRT2.1とNRT2.2の経時的な発現量をNAR2.1の発現量とあわせてreal-time RT-PCR法で解析し、硝酸吸収量、硝酸還元酵素(NR)遺伝子(NIA1)の発現パターンおよびNR活性との関係を解析した。
NRT2.1とNAR2.1の発現量はCaSO4溶液から硝酸に浸漬後、非常に短い硝酸誘導時間の後に増加した。一方、両遺伝子発現の誘導はアンモニアにより短時間抑制され、全体的な発現量も低下した。NIA1の発現も硝酸によって誘導され、アンモニアによって誘導が抑制されることが明らかとなり、これら3つの遺伝子の発現は同様な制御下にあると示唆された。NRT2.2は上記遺伝子とは異なり、アンモニア条件下でも転写された。イネの硝酸吸収量はNRT2.1の発現パターンと同様に15分間の誘導時間の後に増加し、硝酸吸収の誘導はアンモニアにより短時間抑制された。以上の結果より硝酸誘導時においてはNRT2.1とNAR2.1が硝酸吸収同化の中心的な役割を果たしていると結論した。