抄録
Alは植物根の生育を著しく阻害するが,その阻害経路はまだ解明されていない。本研究では、タバコ培養細胞(SL細胞株)を用い、細胞膜を介したショ糖吸収に対するAlの阻害効果を解析した。まず、タバコ細胞におけるショ糖吸収特性を解析した。タバコ細胞を、異なる濃度の14C-ショ糖を含み且つ浸透濃度が一定になるようにマンニトールで調整した溶液中に懸濁し、14C-ショ糖の取り込み速度を求めた。その結果、タバコ細胞では、ショ糖濃度に応じて、高親和性(1~3mM ショ糖)と低親和性(25 ~75 mM ショ糖)の取り込みが認められた。さらに、高親和性のショ糖取り込み機構について、阻害剤(CCCP、Wortmannin)を用いて検討した結果、タバコ細胞に見られるショ糖取り込みの大部分はショ糖-プロトン共輸送体を介したものであり、エンドサイトーシスではないことが明らかとなった。次に、Alのショ糖取り込みへの影響を見たところ、Alは、高親和性・低親和性の両方を、Al添加後30分で60%程度阻害することが明らかとなった。以上の結果から、タバコ培養細胞では、高親和性と低親和性のショ糖吸収があり、Alはその両方を阻害すること、Alによるショ糖吸収阻害はAl添加後30分から見られる初期応答反応の一つであることが明らかとなった。