抄録
コムギのアルミニウム(Al)耐性遺伝子ALMT1は、Alで活性化されるリンゴ酸輸送体をコードする。我々は、Al耐性が高くコムギの近縁種であるライムギを用いてALMT1相同遺伝子の解析を行った。ライムギでは、根部のAl処理を2時間行った後にリンゴ酸およびクエン酸の放出が報告されている。我々も同様の現象を確認し、さらにAl未処理の植物であっても、その切断根に1時間のAl処理をすることで高い有機酸放出が誘導されることを見いだした。次に、ノーザン解析を行い、ALMT1相同遺伝子の発現量の増加と有機酸放出量の増加とが類似していることを見出した。従ってライムギにおいても、ALMT1相同遺伝子がAl依存性の有機酸放出を担っている可能性が高い。ライムギのALMT1相同遺伝子を単離するため、RT-PCR法やcDNAライブラリーからのスクリーニングを行った結果、ライムギにおいてコムギALMT1-1と核酸配列レベルで90%の相同性を示す3種類のALMT1相同遺伝子の存在を明らかにした。現在、これら3種類のライムギALMT1相同遺伝子について、発現様式や機能の相違について解析している。