抄録
グラム陰性細菌が産するRTX(repeat in toxin)毒素タンパク質はCa2+のhalf-binding (GGXGXDXUX) motif配列を複数有し,その高次構造はCa2+の脱着によって可逆的に変化する。この毒素の毒性は高次構造変化によりホストの細胞膜に孔を形成して細胞機能を損なわせることによる。近年,病原菌以外にもRTXタンパク質の存在が明らかになりつつあり,シアノバクテリアのそれは運動性に関与するといわれている。しかし,Synechocystis sp. PCC 6803の場合には,逆に,RTXタンパク質 Sll1951は,運動性のある野生株(WT)では発現が抑制されており,運動性のないグルコース耐性株(GT)ではS-layerに豊富に発現している(全タンパク質の10%以上)。このことからRTXタンパク質の運動性への関与はシアノバクテリアにおいて一般的とは言えない。発現量の多さからSll1951はGT株の重要な機能を担っていることが予想される。今回,Sll1951の生理機能を明らかにするために,WTおよびGT株においてその遺伝子をトランスポゾンの挿入により破壊した。現在,遺伝子破壊株における表現形質の変化を解析中である。本発表では,運動性,細胞表層構造,および増殖におけるCa2+濃度効果等の結果を報告し,Sll1951の生理機能について議論する。