抄録
近年、光屈性反応はオーキシンの光側組織から影側組織への横移動に伴う影側組織の成長促進によるものではなく、光屈性刺激によって誘導される成長抑制物質(光屈性制御物質)が光側組織で生成することによる光側組織の成長抑制に起因するというBruinsma-Hasegawa説が提唱され、数々の証拠が提示されてきた。本研究はヒマワリ下胚軸の光屈性における光誘導性成長抑制物質の本体を徹底的に解明し、光屈性に伴う動態を明らかにすることを目的とした。これまでにヒマワリからは光屈性制御物質の候補としてcaprolactam及び8-epixanthatinが単離・同定されているが、今回我々はこれらの成長抑制物質よりも更に強い抑制活性を示す物質の単離に成功した。NMR等のスペクトル解析により8-O-β-D-glucopyranosyl-1,9,14-pentadecatriene-4,6-diyne-3,8-diol と同定し、トウモロコシの学名(Helianthus annuus L.)にちなんでhelianと命名した。この物質はクレスの幼根伸長を2.6 × 10-6 M以上の濃度で抑制した。更に、HPLCクロマトグラムの比較から光屈性刺激によってこの物質が影側組織よりも光照射側組織に多く存在していることも明らかにした。これらの結果より、ヒマワリ下胚軸の光屈性反応の制御にhelianが関与していることが強く示唆された。