日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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遺伝子修飾の変化を伴うイネ発芽制御遺伝子の発現
*鷲尾 健司森川 正章
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p. 492

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抄録
穀物種子の発芽では、ジベレリン酸(GA)が、胚乳組織の外層に発達する糊粉層に作用して、貯蔵物質の分解利用に関与する加水分解酵素遺伝子群の発現を促す。この生理作用には、GAが初動的に発現を促す転写因子であるGAMybなどの、GA初期反応遺伝子の機能が必須である。GAによるリアルな遺伝子制御のしくみを知るため、初期反応遺伝子自体の発現機構を調べている。これまでの解析により、初期反応遺伝子が示すGA応答性には、長大な第1イントロンにあるエンハンサー効果が必要であることを明らかにした。これらの特徴は、既知のクロマチン制御を受ける遺伝子との類似性があるため、GA初期反応遺伝子の発現がクロマチン段階での制御を受けると想定して、クロマチン動態に関わる1つの要因であるDNAのメチル化状態をbisulfite sequence法で調べた。その結果、GAMyb遺伝子のプロモーター領域に、2ヶ所の主要なメチル化部位を検出した。生体内での3種の周知なメチル化様式のうち、維持型の修飾が非誘導組織である実生で高く、標的組織となる糊粉層では軽減されていた。また糊粉層では、GAの作用によりasymmetricな修飾の一部が有意に減少する傾向が見られた。全体的な修飾の比率は、各々の組織の核型の違いと相関があり、胚乳を起源とする糊粉層の持つ倍数性が、この組織での高いGA応答性に何らかの形で寄与する可能性が示された。
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© 2006 日本植物生理学会
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