日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヒロハノマンテマ無性突然花変異体K034の無性花と雌様花の形成過程とY染色体欠損部位
*小泉 綾子風間 裕介西山 りゑ河野 重行
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p. 496

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抄録
ナデシコ科雌雄異株植物ヒロハノマンテマの無性花変異体であるK034は、1個体に無性花と不完全な雌花(雌様花)をほぼ9:1の割合でつける。無性花は成熟した雄蕊や雌蕊をもたず、雌様花では通常の雌花に5本あるはずの雌蕊群が2本に減少する。高真空SEMを用いて花の発達段階を観察した。初期には、無性花と雌様花は野生型の雄花に似ていて、それらの第4whorlは雌花に比べて小ぶりであった。後期には、無性花では雌蕊原基が抑制され雄蕊原基の伸長は停止したのに対し、雌様花では野生型雌花と同様に雌蕊原基が伸長した。Bクラス遺伝子SLM2とCクラス遺伝子SLM1の発現をin situハイブリダイゼーション法で調べると、野生型雄花の雄蕊原基では雄蕊原基伸長期にともに発現するが、K034の無性花ではいずれも発現していなかった。雌様花でのSLM2SLM1の発現を現在調べている。雌様花に野生型の雄を交配したところ、野生型の雌株と雄株に加え無性花と雌様花をつけるK034タイプがそれぞれ2:2:1の割合で現れた。分離比だけではK034が雄株由来か雌株由来かはわからなかったので、Y染色体全域に分布するSTSマーカーの有無をPCRで調べた。STSマーカー11個のうち6つは確認されたが、p腕上の5つが欠損していた。ヒロハノマンテマのY染色体p腕上には、雌蕊の抑制に関わる領域と雄蕊の初期発達に関わる領域があるとされている。
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© 2006 日本植物生理学会
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