日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ニンジン不定胚発生過程における2種類のVP1/ABI3遺伝子の発現解析
*塩田 肇鎌田 博田中 一朗
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p. 504

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抄録
一般に、種子の乾燥耐性および休眠性は、アブシシン酸(ABA)によって調節されている。その際、ABAの情報伝達にはVP1/ABI3因子が転写制御因子として関与することが知られている。我々は、胚発生のモデル系であるニンジン不定胚から2種類のVP1/ABI3因子(C-ABI3とC-ABI3-L)を単離し、解析を進めてきた。それにより、双方の遺伝子発現が不定胚やembryogenic cells、発達中の種子に特異的であること、それぞれの因子が異なるABA誘導性遺伝子の発現調節に関与することを示してきた。今回は、C-ABI3とC-ABI3-Lの生理学的役割を明らかにするため、C-ABI3C-ABI3-Lの発現量の変化を定量RT-PCR法を用いて詳細に解析した。その結果、双方の遺伝子とも、embryogenic cellsから魚雷型不定胚へと発達が進むにつれて発現量が2倍以上に増加し、不定胚が発芽して実生に成長すると10分の1以下に低下した。この発現量の程度にはC-ABI3C-ABI3-Lとの間で差が見られ、それぞれの因子が発現調節するABA誘導性遺伝子の種類や発現レベルも影響を受けていると考えられる。現在、不定胚形成能獲得や種子発達の段階についても同様の発現解析を進めており、これらの結果と合わせてニンジン不定胚発生におけるC-ABI3とC-ABI3-Lの生理学的役割について考察する。
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© 2006 日本植物生理学会
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