抄録
食の安全確保のためカドミウム(Cd)汚染土壌を植物の力で修復する試みが盛んに行われている。こうしたファイトレメディエーションの実現には、Cdに植物が応答する機構について十分な基礎的知見を持つことが必要である。本実験では植物のCdへの応答をより広く理解するため、Cdに対する応答の変化したシロイヌナズナ変異株を単離することを試みた。スクリーニングには培地中にCdの濃度勾配をもつ寒天培地を用い、この上にEMS処理したシロイヌナズナのM2種子を播種し、Cdの濃度勾配に逆らった形で根が伸長するよう生育させた。この培地に野生株を生育させた場合には、主根の先端がCd濃度の高い領域に達すると伸長が止まることが確認されていた。スクリーニングの結果、Cd濃度の高い領域へ達した後も主根の伸長を続ける変異株や、主根の先端が高Cd濃度領域へ達するとすぐに主根の伸長を止め、代わりに低Cd濃度領域に位置する部位から側根を盛んに伸ばし始める変異株などを得ることができた。こうしたCdに対する応答様式が根本的に変化した変異株について、現在、解析を行っている。