抄録
シアノバクテリアは線毛を用いて走光性などの細胞運動を示す。われわれは、これまでに走光性の光受容体や調節因子、線毛形成のアセンブリ因子や調節因子などの遺伝子を、常温性シアノバクテリア Synechocystis sp. PCC 6803 を用いて同定してきた。昨年度の年会で、走光性の新規光受容体 SyPixJ1 のホモログとして好熱性シアノバクテリア Thermosynechococcus elongatus BP-1 の TepixJ 色素結合ドメイン TePixJ_GAF の性質を報告した。色素結合ドメインを His タグ融合として Synechocystis で発現、精製し、 SyPixJ1 全長と同じ、 430 nm と 530 nm の可逆的な光変換を示した。本発表では、この TePixJ_GAF ドメインのより詳しい解析結果を報告する。レーザー飛行時間型質量分析装置を使用し、色素を結合しているペプチド断片を同定した。TePixJ_GAF は青色吸収型だけでなく緑色吸収型も暗反転を示さず安定であった。タンパク質の変性実験から結合している色素はフィコシアニンの PCB とわずかに異なっていた。以上のことは TePixJ や SyPixJ1 の色素の構造、色素の結合部位、様式が植物のフィトクロムや細菌のバクテリオフィトクロムと異なる可能性がある。