抄録
PASドメインは、アミノ酸配列は多様だが、立体構造は保存されているスーパーファミリーであり、光、酸化還元状態、電圧、酸素などのセンサー、二量化のリンカーなどの多様な機能ドメインを含む。中でも、LOV型フラビン結合PASドメインは青色光センサーとして働く。特に高等植物のフォトトロピンにおいて、その光化学的性質が解析されている。糸状性シアノバクテリア Anabaena sp. PCC 7120においては、多くのマルチドメインタンパク質が存在し、特にPASドメインが豊富に存在していることが分かっている。我々はこれらの中から、3つのLOV型フラビンPASドメインを検出した。これらのドメインをヒスタグ融合タンパク質として大腸菌で発現・精製した。その結果、近縁種と保存されたフラビンPASドメインは実際にフラビンを結合していたのに対し、近縁種とは保存されていないPASドメインは全くフラビンを結合していなかった。また、フラビンを結合している2つのPASドメインは、それぞれ青色光に応答してフォトトロピンと同様な光還元反応を示したが、その光応答性は大きく異なっていた。一方は完全に光還元され、暗反転も非常に遅いのに対し、もう一方はわずかにしか光還元されず、暗反転も非常に早かった。これらのPASドメインの生物学的役割について議論する。