抄録
光化学系I(PSI)複合体は、光合成の初期反応である電子伝達反応の場であるチラコイド膜に存在する膜タンパク質複合体である。私達は、好熱・好酸性の原始的な紅藻であるCyanidioschyzon merolaeのPSI複合体の構造と機能を詳細に分析するため、PSI複合体を精製した。Blue Native電気泳動分析による推定分子量は、約400 kDaであった。これをさらに変性させ二次元目に展開することで、精製されたPSI複合体標品に集光性アンテナ複合体(LHC)Iが結合していることが確認された。また、現在までにPsaA, PsaB, PsaC, PsaE, PsaF, PsaLがサブユニットとして確認された。アンテナサイズは、反応中心あたり約200 Chlorophyllaで、高等植物のエンドウのPSI複合体よりも大きな値であった。また、反応中心あたり約36分子のzeaxanthinを結合していることが明らかとなった。violaxanthinとantheraxanthinは検出されなかったので、このzeaxanthinはキサントフィルサイクル以外の働きに関わっていると考えられる。また、C. merolaeのLHCIをコードしている遺伝子は一つしか同定されていない。これらことから、C. merolaeのPSI複合体は、高等植物とは異なるアンテナシステムを有していることが示唆された。