抄録
種子登熟期の高温は、イネにおいて収量の低下および収穫物の品質低下をもたらす。高温条件(33/28℃)で登熟した米粒は、対照(25/20℃)と比較して外観が著しく乳白化し、千粒重が13%低下した。また、アミロース含量は対照区の17.2%に対して、高温区では12.1%と低下した。アミロペクチンについては、高温区においてDP6-18の短鎖が減少し、DP20-32の長鎖が増加した。そこで、高温が種子登熟代謝に及ぼす影響を明らかにするために、マイクロアレイ解析およびディファレンシャルスクリーニングを行い、高温応答性遺伝子を同定した。出穂後10日目の頴花において、高温処理によってheat shock proteinおよびα-amylase遺伝子の発現が誘導され、ADP-glucose pyrophosphorylase、GBSS-I、starch branching enzymeおよびprolamin遺伝子の発現が抑制されることが明らかとなった。以上のことから、高温登熟条件におけるアミロース含量の低下やアミロペクチンの側鎖構造の変化は、デンプン代謝系の遺伝子の発現が様々に影響を受けることによって生じていると示唆された。