抄録
シアノバクテリアのカロテノイドは、生物種ごとに多様性があることがわかってきた。ゲノム塩基配列が判明しているAnabaena sp. PCC 7120は、極性カロテノイドとしてミクソール・フコシドとケトミクソール・フコシド、非極性は、β-カロテン、エキネノン、カンタキサンチンを持つことを明らかにした(Takaichi et al. (2005) PCP)。さらに2種類のβ-carotene ketolase (CrtW, CrtO)が、基質を使い分けていることを見出した(Mochimaru et al. (2005) FEBS Lett.)。
本研究ではAnabaena 7120について、カロテノイド生合成系遺伝子の破壊株を作成することにより機能の同定を試みた。β-carotene hydrogenase (crtR, alr4009) を破壊すると、(ケト)ミクソール・フコシドが(ケト)デオキシミクソール・フコシドに変化したので、この酵素は(ケト)ミクソールの水酸化をしていることが判明した。ミクソール合成に関して、Synechocystis sp. PCC 6803で機能が確認されている3,4-desaturase (crtD, all5123)の破壊株はミクソール合成に影響しなかった。またSynechocystis 6803のfucose synthase破壊株はフコースを結合できないが、Anabaena 7120ではフコース以外の糖が結合しているようで分析中である。緑色硫黄細菌Chlorobium tepidumのlycopene cyclaseに相同性のあるcruA, alr0920破壊株のカロテノイド組成は、野生株と変わらなかった(本大会、高市、他)。