日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シアノバクテリアのリコペン・シクラーゼ: 未知の4番目のタイプが存在するか?
*高市 真一持丸 真里増川 一近藤 久益子池内 昌彦
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p. 568

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抄録
カロテノイド生合成においては、リコペン・シクラーゼによりリコペンがγ-カロテンを経てβ-カロテンになる。現在、互いに相同性のない3種類の酵素が知られている。(1)細菌CrtY、2種のシアノバクテリア(Synechococcus sp. PCC 7942, Prochlorococcus marinus)、植物CrtL, CrtL-bでは、互いに相同性のある酵素が働いている。(2)一部の細菌(Mycobacterium, Myxococcusなど)ではCrtYc, CrtYdのヘテロダイマーが、古細菌と菌類ではこの2種類のペプチドが結合した酵素が働いている。(3)緑色硫黄細菌(Chlorobium tepidum)では3番目の酵素CruAが機能しており、ゲノム解析されたシアノバクテリアにもcruAに相同性がある遺伝子が存在することが判った。
このcruA類似遺伝子の機能を検討した。Anabaena sp. PCC 7120のこの遺伝子の破壊株は、カロテノイド組成に変化がなかった(本大会、持丸、他)。Synechocystis sp. PCC 6803のこの遺伝子の破壊株は、分離できなかった。またSynechocystis 6803とGloeobacterのこの遺伝子を、リコペンをつくる大腸菌で発現させたが、β-カロテンは合成されなかった(Sandmann私信, Steiger et al. (2005) Arch. Microbiol.)。他にも海外でcruA類似遺伝子の機能解析を試みているようだが、未だに成功した報告がない。従ってシアノバクテリアには別の第4番目のリコペン・シクラーゼが存在する可能性が高いことが示唆された。
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© 2006 日本植物生理学会
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