日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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緑藻クラミドモナスのCO2能動輸送は光化学系IIによって駆動される
*大西 紀和小日向 務福澤 秀哉
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p. 579

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抄録
緑藻クラミドモナスは、CO2欠乏条件下において炭酸同化を効率良く行うために無機炭素濃縮機構(carbon-concentrating mechanism; CCM)を発現し、細胞内の無機炭素濃度を積極的に上昇させることが知られている。しかし、光依存的なCO2輸送体の実体は不明のままである。本研究ではクラミドモナスのCO2取り込みの駆動メカニズムを明らかにするために、光合成阻害剤の影響と、光合成変異株のCO2取り込み活性を解析した。低CO2条件で生育させた野生株のCO2取り込み活性と酸素発生活性(H 2O-NaHCO3)を0~2.5μM DCMU存在下で測定したところ、いずれの活性も0.2μM DCMUでコントロールの50%まで阻害された。DCMUの阻害効果が一次反応的であり、同じ濃度で両活性が同程度阻害されることから、CO2取り込み活性は光合成電子伝達反応によって直接駆動されていると考えられる。一方、光化学系IIの蓄積量と活性が低下しているΔpsbI株のCO2取り込み活性は野生株のおよそ40%まで低下していたが、Cytochrome b6/f、光化学系Iの活性がそれぞれ低下しているΔycf7株、H730Q/H714Q株では、CO2取り込み活性は野生株とほぼ同じであった。従ってクラミドモナスのCO2取り込みは、NDHを介在した光化学系I循環的電子伝達反応によって駆動されるラン藻とは異なり、光化学系IIによって駆動されると推定された。その他の変異株や光合成阻害剤の影響の解析も、合わせて報告する。
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© 2006 日本植物生理学会
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